今年の祭りもまた、例年通りの賑わいを見せている。
彼は言う。
「ここのお祭りはさ、多分、神様がいっぱいいるんやわ」
「なんでそう思う?」
僕がそう問うと、彼はさも当たり前かのようにきょとんとした顔をして答えてくれた。
「人がおらん」
「人が居ないとどうして神様が沢山いると思うの?」
「ちゃうちゃう、逆よ」
僕は少し眉間に皺を寄せた。意味が分からなかったからだ。
彼は続ける。
「神様がいっぱいおって、もう混雑してるから
人が入るスペースがないんよ」
「……ふっ」
「なんえ」
思わず笑いを吹き出した僕に、彼は不服そうな顔を見せた。
「じゃあお祭りに来られた僕たちは勝ち組って事だ」
「勝ち組なー!」
子供のように嬉しそうな笑顔を見せた。
その笑顔に少し懐かしい気分になって、そんな自分でも分からない感情がまた可笑しかった。

「ご機嫌やね」
「夏だからね」
その時、後ろから賑やかな足音と共にトランペットの様な声が飛んできた。
「遅れてごめんねー!もう花火はじまっちゃったねぇっ!」
「始まったとこよ」
翔は言った。
足下の下駄をカラコロと鳴らしながら、彼は少し前を歩き始めた。
「夏は好きやで」
彼は言う。
「俺も好きだよ!」
亮がチラリと僕を見ながら言うもんで、「僕もだよ」と軽く返した。
翔はというと、全く僕らの声なんて聞いちゃいない。
「俺、花火好きやわ」
なんて独り言かどうか曖昧な言葉を発しながら、満足そうに空に咲く大輪を眺めていた。
火薬の匂いを感じるほどの空は、まるで昼間のように明るく照らされている。
「来年は、最初から一緒に居るからね!」
空を見上げる彼の袖を引っ張りながら、亮は言った。
「去年はおったがな」
「その前は居なかった」
「覚えてないわ」
「嘘でしょっ?!俺覚えてるよ!」
「嘘やがな」
彼の悪戯っぽい笑顔が、夜の太陽に照らされてセピア色に色付く。
これが思い出なのだと、僕はおもった。
おしまい

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あとがき
大家(翔)のセルフチェキで遊んでいて撮ったスクショからお話を思いつきました。
名前表記
リョウ→亮